Products News 290

2024年4月10日

利昌工業株式会社


はじめに
 総務省の発表によると2023年3月末時点での5G(第5世代移動通信システム)の人口カバー率は全国で96.6%。大都市圏では99%を超える都府県があり、すべての都道府県においても80%超え。
 2030年頃を目標にBeyond 5Gへの移行も進められ、AI (ArtificialIntelligence) の躍進と相まってデータセンター(DC)の設立が進んでいます。


高速化・大容量化・低遅延化への対応
 DCのサーバーは、CPU(Central ProcessingUnit)を搭載したものに加え、AIと相性が良いGPU(Graphics Processing Unit)を搭載したものが増えており、ますます高速化、大容量化、そして低遅延化の要求が進んでいます。
 これにともない、サーバーなどに搭載されるプリント配線板材料にも、信号の伝搬速度が損なわれ難い「低比誘電率」(低Dk)という特性と、信号が減衰し難い「低誘電正接」(低Df)という特性が求められています。
 そこでまず、DkとDfについて、かなりラフにご説明したいと存じます。
◆誘電率
 プリント配線板の多くは、樹脂板の両面あるいはその内部にも縦横に回路が描かれ、絶縁体と導体が層を成す「コンデンサ」のような構造になっています。この構造は電流(信号)を容易に流すまいという方向に作用し、その程度が誘電率です。
 絶縁物は固体、液体あるいは気体であるかを問わず、それぞれが固有の誘電率を持っていますので、多くの場合は真空の誘電率との比である「比誘電率」(Dk)を用いて、その程度を比較します。


◆誘電正接
 プリント配線板の回路に高周波信号が流れると、これが樹脂板の分子を震わせて熱が発生します。電子レンジのマイクロ波が、食品の水分を震わせて温めるのに似ています。このおり発生する熱は、本来信号として伝わるべきもので、その損失の程度が「誘電正接」(Df)です。
 電子レンジのマイクロ波は2.5GHz(ギガヘルツ)程度ですが、5G通信は30GHz。自動車の衝突防止に使用されるミリ波レーダでは80GHzにもなります。このため高周波基板材料の選定において、Df値は小数点以下4桁目以降の数値が比較検討の対象になっており、各社が鎬を削っています。
 樹脂は全体として電気的に中性でも、これを構成する分子間のレベルでプラスの部分とマイナスの部分があると、誘電特性値が高くなりますので、この偏りが少なくなるべく電気的に安定しているものを選択します。
◆コストパフォーマンスに優れるPPE樹脂
 低Dk&低Dfプリント配線板材料の主流はPTFE(フッ素樹脂)やLCP(液晶ポリマー樹脂)といった熱可塑性の樹脂をベースにしたものですが、利昌工業ではPPE樹脂(ポリフェニレンエーテル)をベースにした低Dk&低Df基板材料をリリースしており、約30年の実績があります。
 PTFEやLCPより低価格でありながら、これらと同等の低Dk&低Df特性を発揮することで、これまでに多くのご愛顧を賜っております。PPE樹脂はもともと熱可塑性ですが、利昌工業ではこれを得意とする熱硬化性樹脂に変えた「変性PPE樹脂」をベースにしております。
低Dk&低Df接着シート AD-3379H
 このたび利昌工業では、Dk値、Df値ともに従来品(AD-3379)よりも向上させたPPE樹脂ベースの低誘電接着シートAD-3379Hを開発しました。
◆材料構成と標準仕様
 新開発の3379H系樹脂は、ミリ波レーダ帯である80GHzにおいてもDk=3.01あるいはDf=0.0019という低誘電特性を発揮します。耐熱性の指標となるガラス転移温度( Tg ) は225℃( DMA ) です。
 これを半硬化の状態(Bステージ)で0.1mm程度に薄く伸ばし、離型フィルムに挟んだ格好でご提供するのがAD-3379Hです。
 この業界でワークサイズと呼ばれる500mm角や340×500mmサイズにカットした後、真空パックでお届けします。




詳細は、PDFファイルでご覧頂けます。
当、Products Newsは、「RISHO NEWS 233号」より抜粋しました。
高周波基板の高多層化に好適 低Dk&低Df接着シート AD-3379H(PDF 1.85MB)



利昌工業株式会社