リショーキャスト変圧器の特長

rishocast

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■モールド変圧器とは

■ガラス繊維強化コイル

■自己消火性

■大容量でも自冷式かつコンパクト

■横倒し搬入にも耐えます(特別対応)

■現地組み立ても承ります(特別対応)

■被災した変圧器の試験

■耐震強度2G対応品も承ります

■風力発電用途にもご採用

■各種試験

 

■モールド変圧器とは

 変圧器の主な部品は「鉄心」と「巻き線」(コイル)です。巻き線には、何千ボルト、何万ボルトといった電流が流れますので、これを絶縁します。

 

 絶縁の方法により、変圧器は「油入り変圧器」と「モールド変圧器」に大別されます(下図参照)。

 

 油入り変圧器は、鉄心と巻き線を鉄のケースに入れ、ケースとの間に生じる空間を絶縁油で充たします。

 

 いっぽうモールド変圧器は、巻き線のみを樹脂で覆って絶縁します。鉄心には電気が流れませんので合理的です。このあと鉄心と巻き線を組み上げます。

 この方法は、絶縁油を溜めるケースが不要ですので、同じ容量なら、モールド変圧器の方が軽量・コンパクトに仕上がります。

 

 リショーキャスト変圧器は、すべてこのモールドタイプでリリースしております。

rishocast

▲モールド変圧器の外観

変圧器の絶縁

▲変圧器の絶縁方法(イメージ)

 

■ガラス繊維強化コイル

モールドコイル
  リショーキャスト変圧器の最大の特長は「ガラス繊維強化コイル」です。

 これは、ガラス繊維で強化した巻き線を金型にセット。ガラス繊維の間隙の隅々までに、エポキシ樹脂を真空引きしながら含浸。そして熱硬化させるというものです。これにより、樹脂には絶縁不良の原因となる気泡(ボイド)が入らず、さらにFRPで強化された格好の頑強なコイルに仕上がります。

 ちなみに「モールド」とは、このおり使用される「金型(Mold)」のことです。絶縁油を使用しない変圧器の製法は、金型を使用しない乾式絶縁(プリプレグ法)など他にもありますが、国内において、ガラス繊維強化コイルをもつモールド変圧器はリショーキャストだけです。

 

◆絶縁油を使用しない変圧器の製造方法と性能比較

製造方法 金型法と金型レス法の特長 性能評価 ◎優 ○普通 △劣る 摘要
絶縁性 耐湿耐汚損性 保守点検
金型方式

真空

含浸法

巻線と金型間にガラス繊維を充填し真空下で低粘度樹脂を加圧注入し加熱硬化させたもの(巻線内部に樹脂は浸透)

ボイドレス

金型使用

吸湿なし

コイル表面が滑らか、

清掃容易

ガラス繊維で強化されているので耐クラック性が良い
注型法 シリカ等の充填剤入りエポキシ樹脂を金型内に真空注入し加熱硬化させたもの(巻線の内部に樹脂は浸透しにくい)

ボイドレス

金型使用

吸湿なし

コイル表面が滑らか、

清掃容易

クラック対策が必要

金型レス

方式

プリプレグ法 ガラステープ等に樹脂を塗布し半硬化させたものを巻線に巻き付け加熱硬化させたもの(巻線内部に樹脂は浸透していない)

端子タップの引出部難点

表面・端子タップの引出部難点

表面凸凹あり

塵埃付着しやすい

金型レスのため絶縁層が不均一になりやすい。

ボイドが残りやすい

 

■自己消火性

 リショーキャスト変圧器は絶縁油を使用しませんので、万一火災に遭っても、絶縁油が熱膨張して爆発したり、飛散した油に引火したり、といった心配がありません。さらにコイルを覆う樹脂には「自己消火性」を付与していますので、類焼の危険も低減されます。このため公共施設を中心に多くの納入実績がございます。

自己消火性

▲自己消火性のイメージ

◆6kV リショーキャスト変圧器と油入り変圧器の特性比較

種類

リショーキャスト変圧器

油入り変圧器
耐熱クラス F A
巻線の温度上昇限度 95K 55K
使用場所 屋内 屋内、屋外
爆発性 非爆性 万一の場合爆発の可能性有り
燃焼性 難燃性 可燃性
耐湿性 吸湿しない 呼吸式の場合吸湿する
騒音レベル(dB) 63 56
短絡強度 より強い 強い
絶縁特性 安定 安定
絶縁構成 エポキシ樹脂とガラス繊維の複合構成 紙、鉱油
巻線の外部力に対する強度 巻線は樹脂モールドしているため破損しにくい 巻線はタンク内に収納するため保護される
耐震性 より強い 強い
耐インパルス特性 強い 強い
保守点検(定期点検)

1.  掃除機・ウエスによる清掃

2.  外観目視点検

3.  温度計の監視

1.  絶縁油の特性チェック

2.  絶縁油のろ過

3.  油面計、油漏れ点検

4.  温度計の監視

5. 必要に応じて絶縁油を交換

 

■大容量でも自冷式かつコンパクト

 リショーキャスト変圧器のもう一つの特長は、コイルに設けたエアダクトです。

 モールド変圧器は3000キロボルトアンペアといった大容量になると、エアーブラスト(Air blast)、すなわちコイルを冷却するために電動ファンをとりつけることがあります。

 いっぽうリショーキャスト変圧器のガラス繊維強化コイルなら、ここにエアダクトを設けても十分な強度が確保できます。

 これにより、4000キロボルトアンペアといった大容量になっても、エアーナチュラル(Air natural)、すなわち自然な空気の対流のみでコイルを効率よく冷却できます。

air duct 4000kVA 4000kVA

▲コイルに設けたエアダクト

自然な空気の対流のみで効率よくコイルを冷却します

▲自冷式 30kV / 4000kVA変圧器

2815(W) / 1610(D) / 2570(H)

▲更新にあたり3000kVA 電動ファンつき変圧器のスペースに収まった左の自冷式変圧器

 

■横倒し搬入にも耐えます(特別対応)

 随分前に導入した変圧器を更新するにあたり、交換用の変圧器を搬入する経路の高さに制約がある場合、丈夫なコイルをもつリショーキャスト変圧器なら、寝かせた格好で搬入することもできます。くわしくはこちらをご参照ください。
横倒し搬入 横倒し搬入

▲横倒しで搬入経路を進む

▲高さ制限のあるハッチをスロープで登る

 

■現地組み立ても承ります(特別対応)

 随分前に導入した変圧器を更新するにあたり「これ、どこから入れたの?」といったことが、実は、ままあります。リショーキャスト変圧器なら、鉄心や巻き線などのパーツで持ち込み、現地で組み立てることも可能です。くわしくはこちらをご参照ください。

▲現地で鉄心を積み上げ

▲パーツで持ち込んだコイル

▲現地で電気的試験

 

■被災した変圧器の試験

 兵庫県南部地震(1995年1月)が発生したおり、被害が大きかった神戸・三宮地区では430台のリショーキャスト変圧器が稼働していました。

 頑強なコイルをもつリショーキャスト変圧器の多くは、そのまま運転を再開、あるいは点検の後、運転が再開できたため、被災地において早期の電力復旧に貢献しました。

 しかしキュービクルが大きく傾いたことで、設備全体として電力が供給できないこともありました。

 利昌工業では、このようなキュービクルにあった7台のリショーキャスト変圧器を尼崎工場に持ち込み試験しました。

 その結果、アンカーボルトや端子といった箇所に破損や変形は見られたものの、ガラス繊維強化コイルの電気的特性に異常は見られませんでした。

被災した変圧器 キュービクル

▲被災した変圧器

▲キュービクルの中で被災しました

モールドブロック 一次端子 二次端子 アンカー

▲ブロックで固定されたコイルの外観は異常なし

▲変形した一次端子

▲変形した二次端子

▲破損したアンカーボルト

◆試験結果

  点検項目 単相200kVA
 6600/210-105V
1φ3W結線
三相200kVA
6600/210V
Y-Δ結線
三相250kVA
6600/210V
Y-Δ結線
三相250kVA
6600/210V
Y-Δ結線
三相250kVA
6600/210V
Y-Δ結線
三相250kVA
6600/210V
Y-Δ結線
単相75kVA
210/210-105
スコット結線
外観

ダイヤル

温度計

フランジ打傷 フランジ変形 異常なし 本体凹変形 異常なし 異常なし 異常なし
一次端子 異常なし

U相ならびにW相

変形大
V相がいし用

フレーム曲がり

3相とも変形
W相がいし用フレーム曲がり
U相のみ変形 W相のみ変形 3相ともに変形大 異常なし
二次端子 3相変形小 W相のみ変形 3相とも変形
W相は変形大
3相とも変形大 3相とも変形大 3相とも変形

二次、三次

とも異常なし

フレーム 異常なし
アンカーボルト 異常なし
(多少変形)
4か所のうち3か所破損 4か所破損

4か所のうち

1か所破損

4か所のうち

3か所破損

4か所のうち

2か所破損

3か所異常なし
1か所変形
モールドコイルの外観 異常なし
コイル固定用ブロック 外観ならびに固定位置に異常なし
車輪ならびにストッパー 異常なし
外観全体 コイル本体ならび固定ブロックは異常なし。フレームは打傷の他は異常なし。端子ならびに鉄心はコーナー部に打傷・変形あり
電気的性能 誘導耐圧 異常なし
部分放電試験
(定格の1.3倍)

U相ならびにV相

5ピコクーロン以下

U相、V相、W相、いずれも5ピコクーロン以下

 

■耐震強度2G対応品も承ります

 リショーキャスト変圧器は、通常1.5Gに耐えられるように設計しておりますが、先の大震災の後、2Gの耐震性能を備えたモールド変圧器を開発しました。これを検証するため耐震試験を実施しました。くわしくはこちらをご参照ください。
耐震試験 耐震試験 耐震試験

▲耐震試験のようす

 

■風力発電用途にもご採用

 頑強なモールドコイルをもつリショーキャスト変圧器は風力発電にも採用され、ナセルや風力タワー内に設置されています。モールドコイルは、強度のほか、耐汚損性、耐湿性、あるいは耐候性にも優れますので風力発電用途に好適です。
洋上風力発電 洋上風力発電 ナセル ナセル
▲洋上風力タワー内に格納されるタイプ ▲風車ナセル内に格納されるタイプ

 

■各種試験

 リショーキャスト変圧器が過酷な環境におかれることを想定した、さまざまな試験を行い、良好な結果を得ております。
散水試験 傾斜試験 耐震試験 汚損試験

▲傾斜試験

▲耐震試験

▲汚損試験

燃焼試験 結露試験 耐クラック試験

▲散水試験

▲燃焼試験

▲結露試験

▲耐クラック試験

(温度サイクル試験)