来年90周年 |
81-01
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当社は来年、創業90周年を迎えます。
酒屋さんや、日本旅館のように家業的な仕事で100年以上も続いているケースは多くありますが、当社のように先端的な仕事で90年、やってこれたというのは有り難いことだと思います。
特にこの20年が苦しかった…。といいますのは、主力商品がつるべ落としのようにダメになって行くものですから、研究開発に100億円は使ったでしょう。設備投資にも100億円以上は費やしたでしょう。知恵をだして、努力もしてきたつもりですが、その結果が大きな失敗もせずに、正規従業員のリストラもせずに、独立資本を堅持して今日あるのは、結局『運がよかった』としか言いようがありません。
運を当てにしたことはありませんが、世の中は一生懸命努力をしても、その努力が報われない人のほうが多いのです。努力をしても報われるとは限らないのですから、あとで振り返ってみると、やはり運がよかったとしか言いようがありません。
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参考 |
81-02
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他社の機械を見にいって、それと同じものを真似してつくるというのなら、それでは当社の技術のプライドはどこにあるのか?といわざるを得ません。
真似をするということは、それ以下のレベルのものしか出来ないわけです。見た機械がたまたま二流品なら、二流以下のものしか出来ないことになります。
真似でなく『参考にする』という場合は違います。参考にするというのは、見に行く前に、こちらに、しっかりとした考え、物差しの尺のようなものがあって、その上で自分の考えとどこが違うか確認に行く…というのが参考にするということです。
『和して同ぜず』という言葉がありますが、人の意見も聞くが、自分のアイデンティティーをしっかりもっていることが大切です。こちらに尺がないと、一体、長いのか?短いのか?すらわかりません。
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海外での売り上げ |
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当社の海外市場での売り上げは、現在、全売り上げの30パーセントですが、近いうちには50パーセント程度になるでしょうし、また、そうせざるを得ないと思います。
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本気度 |
81-04
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戦後の復興期には、日本はみんなが本気でやっていたと思いますが、今は、韓国や中国に比べて、日本人は『本気度』が足りないのではないのかと思います。
もっと、われわれは本気でものごとを考え、追求して行く必要があるのではないでしょうか?
よく潰れた会社の経営者が後で述懐しています。潰れたあとの、この今のしんどさを思うと、潰れる前に、今の何十分の一の努力でも、本気でやらなかったのか悔やまれると…。
モンゴルから来たお相撲さんが、何故あれほど上手な日本語をしゃべれるのか?本気度が違うからです。
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助けてもらう |
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イザという時になったら、助けてもらおうなどという考え方はあまいと思います。
悪くなってから『助けてくれー』といってもそれは、とても無理な話なのです。銀行にしても、銀行にあるお金は自分の金ではありません。人から預かっているお金です。銀行の金は銀行の金ではないのですから、悪くなって潰れそうな会社を救済するために金をつかうわけにはいかないのは道理です。
助けてもらうなどという考え方では、経営はできません。例えば、総合大学の医学部は赤字のところが多いのに対して、医学部だけの単科大学は立派に経営しているところが多い。それは総合大学は医学部が赤字でも、経済学部で儲かっていると思うから、考え方が何かにつけて、どうしてもあまくなるのです。
それに対して、医学だけでやっている大学は、自分ところの病院と学校だけで、他に頼るところはないわけですから、必死の経営努力をしていますから、違ってくるのです。
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経営努力 |
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大手企業の下請をやっている会社は、技術的な努力はしているかも知れませんが、経営努力はしていないと思います。何故ならだまっていても注文がきます。頼るところがあるのですから。
しかし、企業は独立していないと本当の企業ではありません。企業は頼ってはダメなのです。頼るということは『自分で考える』ことを捨てるということです。
相手に考えてもらおうとするわけですから、頼るということは企業の堕落につながります。
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人材の発掘 |
81-07
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本当に能力のある人を、われわれは見出しているのだろうか?疑問に思うことがあります。
当社では、勤続が30年を超える人が定年退職する場合、私のところに挨拶に来られることになっています。
日頃、直接、接する機会の少ない人も多くその時、出身校や経歴を知り、話をして初めて印象を受けるわけです。中には、私達は本当に、この人の能力をきちっと引き出したのであろうか?と考えてしまう人がいます。人間の能力というものは、しかるべきポジションにつけてみないとわからないものです。
これはと思う人は、思いきった異動をして、しかるべき責任をもたせてみるべきだと思います。よく、いやこの人は当部署にはなくてはならない人で、いてもらわないと困りますなどと、異動に反対する上司がいますが、人を『便利使い』すべきではありません。
かけがえのない人…などというのはいないのであって、その人がいなくても、次の人がなんとかやりこなし、そうして世の中は進歩して行きます。
私などは、いつも戦争のことを考えます。部隊では、人は死ぬのですから、いてもらわないと困るなどとは言っておれないのです。人事が停滞すると、本人もそのうちに、ま〜適当にやっておれば良い…と思うようになり、それは本人にとっても損だし、会社にとっても大きな損失になります。
能力のある人を見つける…というのが実は上に立つ者の最も大切な仕事ではないでしょうか。自分ひとりが出来ることなど、知れているのですから…。
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