無理をする |
82-01
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多少の無理をしないと、進歩はありません。無理をして、それがいつまでも無理のままでは困るのであって、知恵を出して、工夫するうちに無理が無理でなくなってきます。それが進歩です。
最初は無理をしないと、進歩にはつながりません。
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海の鯨より川の鮒 |
82-02
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中堅とか中小の企業は、いつも身の丈にあった経営を心がけることが大切です。
そして市場は小さくとも、その中ではトップシェア(市場占有率)であることが生きることの要になります。
大海の鯨をねらう必要はありません。おおきな市場でも、占有率が小さければつぶされてしまいます。
鯨が無理だと思ったら、多少、市場は小さくても池を対象にして、池の中の鯉になることです。池の鯉なら威張っておれます。
池の鯉も無理と思ったら、川の鮒になったらよろしい。川の鮒なら生きていけます。何故なら鯨は川までは来ないからです。
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売る人とつくる人 |
82-03
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営業マンは、人との接し方とか、説明の仕方がうまいとか、営業としてのセンスを身につければ、売る商品にはこだわりません。
自動車を売る人は、靴でも売れるし、家でも売ることができます。売るということに専門性があるだけで、売る商品は、極端にいえばなんでも良いのです。
営業の人事を考える場合、長年この商品を担当していたから、異なる商品では無理ではないか?と考える心要はないと思います。
しかし、つくる人は違います。靴は作れても家はつくれません。
モノ作りは、つくるモノに専門性がありますが、売るのは、売るとういことに専門性があるわけで、商品が何であっても、売ってみせるものです。
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恐怖心 |
82-04
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私は50年間、経営者でおりますが、絶えず『恐怖心』をもっています。
社長の給料というのは『恐怖心』と『我慢』の代償ではないかと思うくらいです。経営の原点は恐怖心にあると思います。恐怖心があるから『頑張ろう』という気になります。
例えば今、当社にアドバンテイジがあり、シェアーも高く順調な商品があります。しかし広い世界のどこかでは、当社のものより遥かに品質が優れ、値段も安いものが開発されているかも知れません。われわれが知らないだけで、そんなことは絶対ない、とは誰にも言えません。突然、そういう品物が出てくると当社はどうなる?という恐怖心が、常に私にはあります。
ですから、今は順調で儲かっているから、何も手を下さなくても、それで良いというものではないのです。恐怖心があると、まだ少しでも生産効率があがらないか?品質がもう―段レベルアップできないか…絶えまぬ努力をする必要があると考えるわけです。
他人を一人雇用する場合でも、私の考えは、その人の都合で会社をお辞めになる場合は別ですが、この利昌工業で一生頑張ろうと思っている人なら、私はその人を定年まで守る義務があるというふうに考えるのです。今後とも保証できるとは言いませんが、幸い、これまでの50年間は、会社の不況を理由にして正規従業員をリストラしたことはありません。それは、私と、その人との契約であると考えているのです。従って、定年退職の時、私のところへ挨拶にこられると私は正直、ほっとします。これでこの人に対する責任は終わった、守らねばならないという、これまでの恐怖心の一つから解放されたからです。
人間は、守られていると思っている間は安心感があっても、恐怖心はありません。しかし、守らねばならない人や組織があるとなると、恐怖心があるのが、あたりまえだと思います。もし恐怖心がないというリーダーや経営者がいたとすると、それは無責任というものです。
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解決策を考える |
82-05
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私が50年間、経営をしてこられたとういうのは、精神的にタフだったからだと思います。精神的にタフでないと長く経営はできません。私の場合、次から次へと起こってくる問題の解決策を考えます。
私が悩むとすると、どう解決してやろうかと悩む…というより、懸命に思考するだけです。私は、起こってしまったことについては悩みません。過去のことは、取り返しがつかないわけですから悩んでも仕方がありません。この割きり方が私をタフにしているのかも知れません。
解決策を考えるとういのは、前むきで、解決できた時の夢が描けるから、くよくよすることはありません。済んでしまった事を悩んでも、そこには絶望があるだけですから。
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実体経済と金融経済 |
82-06
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実体経済がよくならないと、本当に景気はよくなりません。
製造業、とくにモノをつくるという仕事は付加価値をつくりあげてゆく仕事です。石から鉄をつくり、鉄から自動車をつくり…というように付加価値をあげてゆく仕事は、バブルがはじけることも比較的少ない。思惑で原材料を余分に買ったとしても多寡が知れています。
この実体経済が悪くなると、お金の需要が減少しますから、金融経済はお金を貸すところがない。そこで、金で金を生むような方向に走ります。金融経済の思惑は、実体経済と違って、思惑がおおきく膨らみますから、一つ間違うと先般のような危機が起こります。
実体経済がよくなると、金融経済も健全になるわけで、実体経済をよくすることが一番肝要になります。日本の実体経済を強くする鍵はテクノロジーです。官民あげてテクノロジーの不正な流出を防ぐ努力が必要です。
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英語 |
82-07
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グローバル化の時代になると、英語は絶対必要になると思います。
グローバル化とは、一つの価値観で世界を統一しようというのですから、この事が良いとか悪いとかは、別にして、そういう流れに私達は逆らうわけにはいかないのです。
言語でいいますと、理由はともかくとして、それが英語で統一されています。グローバル化に向かう流れの中で、日本の欠点は、大方の日本人が、英語が聞けない、喋れないことにあると思います。
あの、自国の言葉に誇りをもっていて、フランス語以外、喋ろうとしなかったフランス人でさえも、今は英語を喋っています。ドイツ人もフィンランドの人も英語を喋ります。インドの優位性は英語ができることにあるといわれますし、韓国の人のほうが、日本人の英語より上手だと思います。
昔、私がスイスへ行ったとき、スイスの人は英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語など、だいたい誰もが4ケ国程度は自由に話せます。その事に感心して聞いてみますと『スイスは人口が、たかだか500万人程度ですから、ものを作って売ろうとしても自国のマーケットだけでは、どうにもならないのです。外国へ売らねばならないという宿命のようなものがあり、従って4ヶ国語くらい喋れないと商売にならない、その点、日本は1億から人口がいるから、日本人は日本語だけでやっていけるというのは、われわれから見ると羨ましい…』と言われたことがあります。
日本は、国内需要がそこそこあるので内需で食える、日本語だけでやっていけるという甘えみたいなものがあり、真剣な英語の必要性に直面したことがなかったので、英語が下手なのかも知れません。
しかし、これからグローバル化の時代になると、日本人もそうは言っておれません。これからの日本人、特に若い人は、英語ができないと、日本の将来は危ぶまれます。みなさんが手遅れなら、次の世代、子供さん、お孫さんには絶対、英語をやらせて下さい。
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