会社の組織 |
94-01
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組織というものは、縄でぐるぐる巻かれて維持されているものではありません。
ひとり一人の気持ち、意識のつながりだけで、かろうじて、維持されているのです。
従って、崩壊しだすと、これほど脆いものはありません。組織を守るには、目的に向かって、出来るだけ大勢の人の意識が共有化されていること。
そして管理本部の大事な仕事は、従業員の規律を守らせることだと思います。そこには妥協は許されません。
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ビジネススクールで教えること |
94-02
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アメリカのビジネススクールで教えることは
@キャッシュ・フロー
A コンペティティブ・アドバンテージ
(Competitive Advantage)
の二つといわれています。
キャッシュ・フローのほうは、黒字倒産とか、昔から日本でも「勘定あって銭足らず」という言葉があるように、損益計算書と貸借対照表のほかに、キャッシュ・フロー計算書がつくられるようになりました。
もうひとつの、コンペティティブ・アドバンテージのほうは、競争的優位性とでも訳しますか…競合他社に対して、当社の優位性がどこにあるのか?ということで、このチェックを怠らないことが企業経営の中で、キャッシュ・フローとともに重要であると教えているのです。
営業、生産・技術を問わず、どの部署においても他社と比べ、当社はどの点が優れており、どの点が劣っているのか、絶えずチェックし、対策を講ずることが大切です。
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S社での工場体験 |
94-03
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私は戦争中に、学徒動員で兵庫県にあるS社の伊丹工場の現場で2年間、働いた経験があります。
その体験からですが…
工場の現場で働くという仕事は、タイムレコーダーを朝、ガチャッと押すと、帰る時まで、工場から一歩も外へ出ることはできません。当時、樹木は、全部切り倒して燃料にしていましたから、工場の中は、緑がなく殺風景なものでした。
私が特に工場の緑化をやかましくいってきたのは、少しでも工場で働く人の癒しになるように思ったからで、当社の工場は、何処にいても緑が目に入るようにしていますが、それは、戦時中の体験が原点になっています。
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9つの帝国大学 |
94-04
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日本は戦前、9つの帝国大学をつくりました。
東京 (明治19年)、京都(明治30年)、東北(明治40年)、九州(明治44年)、北海道(大正7年)、大阪(昭和6年)、名古屋(昭和14年)、そして韓国に京城帝国大学(大正13年)、台湾に台湾帝国大学(昭和3年)の9つです。
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デトロイトの破産 |
94-05
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アメリカ自動車産業の象徴であったデトロイト市の破産は衝撃的なニュースでしたが、アメリカの自動車産業が破綻したわけではない。みんなデトロイトで作らないで海外で作るようになったからです。180万人の人口が65万人までに減少し、空洞化の恐ろしさをまざまざと見せつけられました。
会社のためだけでなく、会社を通じて国をよくする、社会をよくするという考え方をしますと私は、企業の大きな使命のひとつは、「雇用」だと思います。現代は大方の人が会社勤めをしているわけですから。
雇用がなくなると失業者が増え、社会が不安定になりますし、デトロイト市のように、遂に破産するケースもでるわけです。
私がいつもあげている企業の使命が三つあります。それは…
@雇用を通じて社会に貢献する。
A税金を納めることで国に貢献する。
Bわれわれ製造業の場合なら、優れた商品を開発して世の中の進歩に貢献する…この三つであると考えています。
やはり「世界的に売れるものを日本でつくる」ということしかないのではないでしょうか?
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海外への工場移転 |
94-06
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@行きたくとも、行けない時代がありました。
A行きたければ、行ける時代がありました。
B行けるけど、行きたくない時代もあります。
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軍人 |
94-07
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政治家は損得を考えますが、軍人は損得を考えません。
自らの命を捨てようというのですから、損得を考えて出来ることではありません。その意味で軍人は、純粋ともいえます。
しかし、これも私の体験談になりますが、戦時中の日本の軍人の威張りかたは尋常ではありませんでした。
これから日本もある程度の軍備は必要と思いますが、今の自衛隊のように、国民より信頼され尊敬される軍人であってほしいと思います。
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前むきの考え方 |
94-08
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企業は縮こまってはダメだと思います。やはり前に打って出ようという姿勢が大切で、その例がコダック社と富士フイルムさんのケースだと思います。
コダック社は、自社のフィルムの品質に大変な自信をもっていましたし、デジタルカメラが出現した時も、当初はフィルム写真の画質から比べて大したことではないと思った。またデジタルに進むことは自分で自分の足を食うことになると、躊躇したと思います。
富士フイルムさんの方は、いずれ写真フィルムがダメになると考えて、他の分野に積極的に打って出て成功されています。
前向きに考えて、何かに挑戦すれば失敗するかもしれないが、成功するかも知れない。しかし、何もしなければ、何の結果も生まれません。
後ろ向きに考えて何もしない、内に籠る気持ちの中には『慢心』もあるのではないかと思います。(うちのフィルムに勝てるわけがない…とか)。
万に一つでも、フィルムが激減したらどうなる?という恐怖心をもつのが本当だと思います。恐怖心のある間は、慢心にはなれません。
経営者とは、恐怖心との戦いの日々だと思っています。恐怖心は、危機感に置き換えてもよいと思います。
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ひとつの籠に卵を盛るな |
94-09
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諺に『一つの籠に卵を盛るな』というのがあります。
そのひとつの籠を落としたら、卵は全部割れる。危険を避けるためには分散しなさいという教訓です。
こんなに変化の激しい時代、私は一極集中というのは、効率は良いかも知れませんが、危険だと思います。
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