一隅の経営 97
RISHO NEWS194

利昌工業株式会社 代表取締役会長兼CEO

利 倉 晄 一

 

約束

97-01

 約束したことは守る。守れないことは約束しない。
 これが、利昌工業が93年間続いてきた秘訣だと思います。


信用

97-02

 喧嘩(けんか)は最初にしておくことです。後でする喧嘩より、小さな喧嘩ですみます。つい、先延ばして、後でする喧嘩は大きいものになります。
 言いにくいことも、その時、はっきり言っておいたほうがよいのです。
 信用とは、言いにくいことを、はっきり言うことなのです。



企業の寿命

97-03

 企業の寿命は30年といわれたことがありましたが、そうではなくて、社会が必要としているかどうかで、寿命は決まります。
 社会が必要としない会社は一年ももたないでしょう。
 社会の変化にあわせて、そのニーズに応えている会社は、長い寿命を保つことができます。
 世の中は変わるのですから、その変化に、企業も変化して対応していなければなりません。
 変化への対応だけではなく、公害を出さないこと、道義的にしっかりしていること…などはいうまでもありせん。



人間が一番罪深い

97-04

 私は動物の中でも、人聞が一番罪深いと思っています。
 動物は自分の身を守るため、或いは飢えを凌ぎ生きるために、他を殺すことはありますが、それ以外のことで他を殺すことはありません。
 しかし、人間はハンテイングと称して、楽しみで他の動物を殺す場合もあります。
 そんな人間が神に、助けて下さいなどというのは身勝手だと思います。従って、私は神頼みをあまりしません。
 自分を攻撃してくるバイキンや、血を吸おうと手に留まった蚊は叩きますが、それ以外は殺しません。
 工場の木の一枝でも、切るのを好みません。今というこの時間に、ともに、生きているのですから。
 他の動植物を殺して生きる…いわゆる食物連鎖ですね。すべての生物は神がつくったとするなら、この残酷なシステムを、神が何故つくられたのか?疑問に思っています。


挑戦

97-05

 出来るか、出来ないか、わからないことに挑戦するということは、自分の時間を犠牲にすることですから、ただ、それだけで、尊いことだと思います。
 科学者の常識ではできない…と思われているようなことに挑戦するのですから、自分の一生を棒に振るかもしれません。
 しかし、そういう人が出てこないと世の中は進歩しません。


モラル

97-06

 貧しい時でも、日本人のモラルは高かった。
 私の経験ですが、戦時中、どこの家も鍵などかけませんでした。
 現在の方が、モラルは低下していると思いますが、それでも世界の基準よりは、日本人のモラルは高いと思います。



データの整理

97-07

  昔から私が、当社の研究開発のスタッフにやかましく言ってきたことですが、データの記録は成功例だけではなく、こういう配合では失敗しました…という失敗の事例もきっちり残すことです。
 企業は、定年などでも、人は辞めていくわけですから、あの人が辞めたから出来ません…では困るわけで、技術の伝承のためには、次の人の手掛りになるように、そのつもりで、データを作成し、整理しておくことが大切です。



市場占有率

97-08

 大きい企業はつぶれないというのは嘘です。小さいからつぶれるというのも嘘です。
 大事なのはシェア(市場占有率)だと思います。
 大きくとも圧倒的なシェアがない企業はつぶれますし、小さくとも、ニッチな市場で、シェアの高い商品をもっている企業はつぶれません。



一方通行

97-09

 上司が部下に指示し、部下は言われたとを忠実に実行する組織は、素直(すなお)だけど弱い。
 やはり、下から上に「こういうのも、どうでしょうか」という提案のある組織が強いと思います。
 待ちの姿勢になって、言われたことだけしかやらない組織は、見掛けはうまくいっているようでも強い組織とはいえません。
 やはり議論をしたり、火花を散らしたり、というような組織でありたいものです。



趣味は仕事?

97-10

 趣味を聞かれて「自分の趣味は仕事です。」と答える人がありますが、趣味は好きでするもので、自分の好き、嫌いを仕事にもち込んでもらっては迷惑します。



新入社員が選んだ語録

97-11

 (注)利昌工業の新入社員には、研修として22時間の座学と61時間の現場実習があって、最後にテストがあります。
 教材として書籍『一隅の経営』も配付されていますが、テスト問題の中に、利倉会長の語録で、共感できたものを一つ書きなさいというのがあります。
 今年の新入社員13人(高卒を含む)が選んだベスト4をあげます。

☆仕事なんだから、しんどいのがあたりまえ。

☆何が正常で、何か異常か、この区分がわからないと仕事はできない。

☆世の中に、絶対…ということは無いんだから、万に一つのことも考えて行動する。

☆品質が良くて、安くて、熱心なら敵(かたき)でも買ってくれる。品質が悪くて、高くて、不熱心なら親でも買わない。



本稿は、利昌工業株式会社取締役会長兼CEO 利倉晄一が社内の会議等で、発言したことを社員が記録したもので、社内報に掲載したものを一部転載させて頂きました。