一隅の経営 98
RISHO NEWS195

利昌工業株式会社 代表取締役会長兼CEO

利 倉 晄 一

 

秘密を守る

98-01

 昔の日本人は、人の秘密を暴くのは恥と思っていました。
 しかし、今は違います。ましてや、外国となると、秘密を盗むことに虎視眈々としている人や企業があります。
 私達は、集団の利益を守る為に、秘密を守ることの大切さを、改めて認識する必要があります。
 元来、日本人は、人に気を遣う性格ですから、「…それは言えません」とか「…それは教えられません」とは言いにくい。
 しかし、これから日本人も出来ること、出来ないことをはっきり言ったほうが良いと思います。
 「…そんなことを言うと相手は気を悪くするのではないか」と思う人がいますが、特に外国人を相手にする場合は、はっきり言ったほうが良い。
 相手も、気を悪くすることはありません。むしろ優柔不断な日本人のほうが軽蔑されます。


思いきったことをやる

98-02

 びっくりするような、思いきったことをやる時は、業績の良いときならやっても良いと思います。 
 思いきったこと…というのは、大成功することもあるが、また失敗した時のダメージも大きいわけですから、その辺を考えて、今の業績なら耐えられるか、考えておく必要があります。



グローバル化

98-03

 大企業がグローバル化するのは、今やあたりまえで、私は中堅企業でグローバル化に成功したいと思っています。
 それは単に、外国に工場をつくるというだけではなく、マーケティングのグローバル化、原料仕入れのグローバル化など、その中堅企業の体力にあった、グローバル化があるべきと考えています。
 日本人の人口は減って行くのですから、中堅企業でもグローバル化していないと、一流とは言えないとも思います。



種を蒔く

98-04

 営業の種を蒔いておくことが大切です。
 種を蒔いても、芽が出ないかも知れませんが、蒔かなかったら芽の出る可能性はゼロです。


責任

98-05

 言い訳したくても出来ないのが責任。
 理不尽なことで文句が言えないのが、責任というものです。


会社を守る

98-06

 会社を守るということは、そこで働いている従業員を守ることである、というのが私の考え方です。
 人をどんどんリストラして、会社だけ守る…というのには抵抗を感じますので、日々、そうならないように、どこかに穴のあいているところがないか、頭を働かせているわけです。


何とかしましょう

98-07

 「何とかする…」は、日本人の考えとしてNoですが、外国人はYesと受け取ります。
 出来なければ損害を弁償しろとまで言ってきます。



良い会社、便利な会社

98-08

 良い会社と言われて、喜ぶべきではありません。
 むしろ、お得意様からは、便利な会社と思われるように努めるべきです。
 役に立つ、必要と思われる会社であるべきで、人柄の良い会社などと思われても喜ばしいことではありません。



フランス革命

98-09

 フランス革命は自由と平等という、全く矛盾する二つの理想を掲げました。
 自由を主張したのは、どちらかというと学生であり、平等を掲げたのは、勤労者でした。
 自由を推し進めると平等ではなくなるし、平等を推し進めると自由はなくなるという、矛盾があります。
 そこで、広く世の中の人を愛する、つまり博愛を入れて、青、白、赤の有名な三色の国旗(トリコロール)が出来ました。



わかっていてもダメ

98-10

 わかっていても駄目なのであって、大事なことは、そこへ頭を突っ込まないと…。



経営

98-11

 見えているものだけを見てやるのは経営ではありません。
 見えていないものまで想像して、見えているかのごとく判断するのが経営です。



営業はひとり屋台

98-12

 製造現場の人は、きめられたことをキチッとやらなければならない部分が多く、自分の裁量でできる部分は比較的少ないと思います。
 その点、営業という仕事は、一人で屋台を引っ張っているようなところがありますから、今日は雨だから少し仕入れを控えようとか、この前はあれで失敗したから、今度はこれで挽回しようとか、自分の裁量を効かさねばならない部分が多い。
 上司は、そういった営業の現場を、逐一見るわけにいかないのですから、報告は毎日聞く必要があります。
 私が昔、営業部長の時は、そうしていました。
 毎日聞いていれば判ります。



価値ある資産

98-13

 有形の資産、特に工場の建物や機械設備などの固定資産は、稼働して利益をあげておれば、有効の資産ですが、下手をすると赤字をつくる凶器にもなりかねない。
 ある日本の自動車会社がオランダの工場を1ユーロ(100円程度)で売却しましたが、赤字が出ている固定資産というのは価値がないのです。
 従って、経営上大事なことは、固定資産がいくらある…ということより、無形の資産の充実に力を入れるべきです。
 無形の資産とは、例えば、営業のシステムとか、技術開発力とか、労使関係とか…こういうものこそ、価値ある資産と言えます。



本稿は、利昌工業株式会社取締役会長兼CEO 利倉晄一が社内の会議等で、発言したことを社員が記録したもので、社内報に掲載したものを一部転載させて頂きました。