RISHO Now 214_1

2019年7月10日
 

利昌工業株式会社


 

SDGsカラーホイールを各国の環境大臣に
 さる6月15日と16日、長野県軽井沢町にてG20(主要20カ国・地域)による「持続可能な成長のためのエネルギ一転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開催されました。
 この会合において、原田環境大臣から各国の環境大臣に、利昌工業のセルロースナノファイバー100パーセントの板材を加工したSDGs (持続可能な開発目標)カラーホイールのラぺルピンが配付されました。(磁石どめタイプ)


17の目標を色別に表現したホイール
 SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月に国連で合意されたもので、2030年までに国際社会が達成すべき17の共通目標です。
 それぞれの目標にはアイコンが設定されており、カラーホイールは、このアイコンの色で17の共通目標を象徴しています。

セルロースとは  
 セルロースは植物の体幹をなすものです。大木が自らの重さに耐えて立っているのも、草木が風雨に耐えられるのも、セルロースが非常に丈夫であるからです。
 植物が空気中の二酸化炭素と水を吸収して、日光を浴びるとセルロースが生成されます。二酸化炭素もセルロースになれば温室効果の心配がありませんし、植物がセルロースを生成する際に排出されるのは酸素です。
 このようにセルロースは丈夫で、環境にやさしく、比較的短い期間で再生が可能、さらに埋めれば土に還るという自然由来の材料(高分子)です。
 このセルロースを用いて、さまざまなものが作られています。
 最も身近なものとして紙があります。下の写真はノートを電子顕微鏡で1000倍に拡大したもので、繊維くずのように見えるのがセルロースです。いろいろな太さのものが見えますが、だいたい100分の5ミリメートルです。

セルロースナノファイバーとは
 セルロースナノファイバー(CNF)は、この写真のようなセルロースの繊維を、さらに細かくナノサイズに解繊したもので、太さ50μmの繊維をさらに1万本に裂くようなイメージです。
 紙のように、セルロースが複雑に絡み合ってできたものは、セルロースの繊維が細いほど丈夫になります。細くなれば繊維どうしが交わる箇所が多くなり、さらに複雑に絡み合うからです。

CNF100パーセントの板材を開発
 利昌工業は創業まもない頃より、紙や布あるいは木材といった自然由来の材料を補強材としたプラスチック板を製造販売しており、現在も高い圏内シェアを占めています。それゆえセルロースで樹脂を強化するのは得意とする分野です。
 しかし、CNFをベースとした材料を開発するにあたり、研究スタッフが拘ったのは「CNFが100パーセント」であることでした。樹指にCNFを混ぜるのでは既存製品の延長にすぎませんし、埋めても土に戻らないからです。
 CNFは多くの場合、90%以上の水を含んだスラリーという状態で供給されます。乾燥すると、せっかくナノサイズに裂いた繊維どうしが結合してしまうからです。
 このほとんどが水であるCNFを、工業的な生産方法を用いて、ある程度の厚みと大きさを持つ板として量産するのは大変難しいことですが、今日まで積み重ねたセルロースに関する知見をもとに、比較的短期間で成し遂げることができました。さらに新たな設備や治具を導入することなく、既存のもので達成できたのは、創業より研鑽を重ねた積層技術によるものです。

切削加工性、インクの乗りと発色、良好
 CNF-100%の板材は、開発に着手してまだ2年程度の試作品段階ですが、環境に優しい材料であることが評価され、この度のG20環境相会合での採用となりました。
 3mm厚のCNF-100%板材を、株式会社シルバーロイ販売様(大阪府大東市)がルーターで25mmφのホイールに加工、ここに精密印刷を施したもので、めでたく実用事例の第1号となりました。