RISHO Now 222_3

2021年7月10日
 

利昌工業株式会社


40ギガヘルツに対応
 このたび利昌工業では、プリント配線板材料の誘電特性を測定するための装置を、最新鋭のものにアップグレードしました。これまでにも同様の測定装置がありましたが、5G通信の進展を視野に、28ギガヘルツ帯や40ギガヘルツ帯における比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)、あるいは信号の伝送損失を測定できるものに強化しました。

プリント配線板材料の誘電特性

 そこでまず、この装置で測定することができるプリント配線板材料の比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)といった誘電特性について、かなりラフにご説明したいと存じます。

比誘電率(Dk)
 多くのプリント配線板は、絶縁板の両面あるいはその内部にも回路が形成されており、導体と絶縁体が層をなすコンデンサのような構造になっています。

 このような状態で回路に信号(電流)が流れると、電子の一部が回路と絶縁板の界面に滞留するという、コンデンサに似た現象が生じます。
 ここに滞留しようとする電子の動きは、信号が前進するスピードを減速させる方向に作用します。進む方向とは別の方向に寄り道するものが出てくるわけですから、その動きに引っ張られるような格好で信号の前進スピードが落ちる…というのが、ざっくりとしたイメージです。
 電子の一部が滞留する程度は「誘電率」で表されますが、絶縁物は固体、粉体、液体、あるいは気体であるかを問わず、それぞれが固有の誘電率を持っています。そこで電極に挟まれた真空の誘電率を1として、これとの比率である「比誘電率(Dk)」で表されることがほとんどです。
誘電正接(Df)
 プリント配線板の回路に信号が流れると、このエネルギーが絶縁板の樹脂の分子を振動させて熱が発生します。これは電子レンジのマイクロ波が、食品に含まれる水の分子を振動させて温めるのに似ています。
 このおりに発生する熱は本来、信号として伝わるべきエネルギーで、この現象によって信号が損なわれる程度は「誘電正接(Df)」で表されます。
 電子レンジのマイクロ波は2.5ギガヘルツ程度ですが、5G通信の周波数帯は28ギガヘルツにもなりますので、このような高周波信号が回路に流れると、絶縁板の樹脂分子がより激しく振動することで、より多くの信号が損失されるわけです。
 以上のような理由で、大容量・高速通信に関係する機器のプリント配線板材料には、より低Dkでより低Dfな性能が要求されています。高周波通信である5G時代を迎え、Df値にいたっては小数点以下4桁目の数値が云々されるなど、この傾向はますます顕著です。

プリプレグやビルドアップフィルムを追加
 利昌工業がご提供する低伝送損失、つまり大容量・高速通信向けプリント配線板材料のラインナップは、これまで銅張り積層板(CCL)が中心でした。
 しかし、5G通信が普及するとアンテナ基板はもとより、データセンターで膨大な情報を処理するための機器の基板も高多層化することが予想されます。
 これを受けて利昌工業では、基板の多層化に必要な薄物CCL(コア材)だけではなく、プリプレグやビルドアップフィルムといった薄物の多層化用材料にも、低誘電特性を付与したものをラインナップに加えております。

多層化用薄物材料の誘電特性も測定可能
 このたび導入した誘電特性測定装置は、@空洞共振器と呼ばれるタイプのマイクロ波共振器、Aネットワークアナライザと呼ばれる電子回路網の解析装置、そしてB制御用パソコンで構成されています(表題横の写真)。
 空洞共振器は測定する材料の形態に応じて、さまざまなオプションを選択することができます。

 そこで、今後は多層化用材料の誘電特性を測定する機会が増えることを踏まえ、試料を垂直にセットするタイプと、試料を水平にセットするタイプ、2種類の共振器を導入しました。
 これにより、ご需要家様から様々な条件のご提示があっても、ご要望に沿った材料開発が迅速に行えるようになると期待しております。

Sub6やミリ波帯に対応
 さらに共振器の周波数は、5G通信の分野でSub6(サブシックス)と呼ばれる3.7ギガヘルツ帯や4.5ギガヘルツ帯、あるいはミリ波とよばれる28ギガヘルツ帯、さらには40ギガヘルツ帯に対応できるものなど、都合5種類の共振器を取り揃えました。 

リショーライト PPE樹脂ベース 低伝送損失プリント配線板材料
 低伝送損失プリント配線板材料は、PTFE(フッ素樹脂)やLPC(液晶ポリマー)をベースにしたものが主流です。
 利昌工業では、これらよりも低価格でご提供でき、かつ同等の誘電特性をもったP P E 樹脂(ポリ・フェニレン・エーテル)をベースとする低伝送損失材料をご提供しており、モバイル基地局のアンテナ関係など、ご採用が増えております。
 さらにPPE樹脂は接着性に優れますので、アンテナ基板と、それを制御するための基板を張り合わせるなど、異種材料どうしを張り合わせた、ハイブリッド基板の製作も得意とするところです。
 利昌工業では、これらの特長をもつPPE樹脂ベース低伝送損失プリント配線板材料で、5G通信の普及に貢献したいと存じます。ご評価の機会を賜りたく、ご連絡をお待ちしております。  
ラインナップ

一般特性