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2021年10月10日
 

利昌工業株式会社

熱伝導率とは 
 下の図は、かなりラフに描いた熱伝導率(単位:W/m・K)のイメージです。
 熱伝導率は1メートルの厚みをもつ材料の両端に、1℃の温度差がある場合、その材料の1平方メートルの面積を通して、1秒間に流れる熱量と定義されています。
 この図の条件で1秒間に1ジュールの熱が流れた場合、材料の熱伝導率は1W/m・K(ワット/メートル・ケルビン)となります。

プリント配線板材料の薄型化、複合材料化
 これまで利昌工業では、プリント配線板材料の熱伝導率を測定する際はJIS R1611に基づく「レーザーフラッシュ」という方法を採用してまいりました。
 この方法はまず、サイズが10mm角程度、厚みが1mm程度の試料を所定の試験機にセットして「熱拡散率」を測定します。次に当該試料の「比熱容量」と「密度」を測定。そして、これら3つの測定値を掛け合わせて熱伝導率を算出するというものです。
 レーザーフラッシュ法は、自ずと一定の厚みを有するファインセラミックスの熱伝導率を測定する規格によるものですから、試験機が要求する試料の厚みは最低でも1.0mmです。
 一方、利昌工業がご提供する高熱伝導プリント配線板材料の多くは厚みが0.1mm程度ですから、これとは大きくかけ離れています。
 さらに最近では、これら薄物の材料をアルミ板や銅箔の表面に配した複合材料へのご愛顧が増えておりますので、熱伝導率を測定するにあたり、レーザーフラッシュ法には馴染まないアイテムが多くなってきました。

熱伝導率測定システムを導入
 これを受けて、このたび新たに導入した熱伝導率測定システム(DynTIM s)は、ASTM D5470に準拠したもので、実際の使用に近い状態にある試料の熱伝導率を測定することができます。
 ASTMは米国の工業規格で、日本のJIS規格に相当するものです。欧米や中国など、海外のご需要家様においてはプリント配線板材料の熱伝導率も、このASTM D5470に準拠した測定値で評価されることが多くなっており、業界の標準となりつつあります。
 今回導入したシステムでは、接着シートのように薄くて柔らかい材料、あるいはアルミベースプリント配線板材料や樹脂つき銅箔といった複合材料の熱伝導率を測定することができます。さらに温度分解能は0.01℃と高く、熱伝導率を高精度に測定することができます。

ご需要家様の放熱設計に貢献
 近年、電子機器の放熱設計においては、パソコン上での熱シミュレーションが多用されております。この際、物性値が未知である複合材料については、別途パラメーターとして、熱伝導率を入力する必要があります。本システムの導入により、ご需要家様のシミュレーションに沿った格好での熱伝導率の測定が可能となりました。
 ご需要家様の放熱設計に大きく貢献できるものと期待しております。

基板の放熱設計をサポート
 一般的に温度が10℃上昇すると、化学反応(材料の劣化)の速度は2〜3倍になると言われています。このため高輝度LEDやパワー半導体といった稼働時に高い熱を発する部品を搭載する基板の設計においては「熱をいかに効率よく逃がすか」という熱対策の重要性が高まっています。
 熱が部品の中にこもると、材料の劣化のスピードが加速され、機器の誤作動や故障あるいは想定された寿命を全うできないこともあるからです。
 これを受けて利昌工業では、基板の放熱設計をサポートするための、さまざまな高熱伝導プリント配線板材料を取り揃えておりますので、最新のラインナップをご紹介いたします。

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