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2022年7月10日
 

利昌工業株式会社

プリント配線板材用銅張り積層板(CCL)
 利昌工業の代表的な電子材料は「プリント配線板用銅張り積層板(CCL=Copper Clad Laminates)」です。
 用途に応じて、高熱伝導性、高耐熱信頼性、高接続信頼性、あるいは低伝送損失性といった特長を持つアイテムを取り揃え、多くのご愛顧を賜っております。
 CCLは、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸・半硬化させた基材(プリプレグ)を所定の枚数に重ね、この上下に回路形成用の銅箔を敷いた後、高温・高圧でプレスして作ります。
 このおりプリプレグは、絶縁層の形成、銅箔との接着剤、これらふたつの役割を同時に演じます。
 CCLはこのあと、お客様のもとで銅箔面に回路を描いたり、部品挿入用の穴をあけたり、といったさまざまな加工を施され、プリント配線板(PWB)になります。

内層回路入り多層銅張り積層板(多層CCL)
 製品の小型化・高性能化のためには、限られたスペースに多くの回路を形成する必要があります。このためタブレット型パソコンやスマートフォンなど、コンパクトでも高性能な機器の基板は多くの場合、多層構造(マルチレイヤ ー)です。
 4層板を例に、ざっくりご説明すると、まず両面CCL(コア材)の表面にエッチングで内層回路を形成。これを再度、所定の枚数のプリプレグと銅箔ではさみ、高温・高圧でプレスして作ります。厚みは1.6mm程度です。
 利昌工業のようなメーカーからコア材とプリプレグを購入して多層CCLに加工される例は多くありますが、用途に応じた樹脂のブレンドから、コア材やプリプレグの製造、そして内層回路のエッチングまでを一貫して国内で行う例は、管見の限り五指にも満ちません。
 多層CCLは、古参が居並ぶ利昌工業のアイテムとしては新参者ですが、それでも約40年の中堅です。こちらもお客様によって多層プリント配線板へと加工されます。

回路(銅箔)表面の粗化
 二度目のプレスの前、コア材に描かれた回路(銅箔)には表面積を増やすことで、接着剤であるプリプレグとの密着性を高めるための「粗化処理」が施されます。
 この工程は接着や塗装が必要な業界で「荒らし」と呼ばれるもので、それぞれに独特の方法があります。多層CCLの内層回路は、専用の薬液を用いて銅箔の表面に微細な凹凸を無数に形成する方法で行われます。

「ハローレス処理」「ブラウン処理」いずれも対応可
 これまで利昌工業では、この粗化処理の方法として専ら「ハローレス処理」を採用してきましたが、このたび「ブラウン」処理の設備も導入することで、いずれのご下命にも対応できる体制が整いましたので、ご案内申しあげます。

ハローレス処理
 まず専用の薬液により銅箔の表面に針状の酸化物の結晶を無数に形成します。
 ただこのままでは尖った先端が折れたり、微細な空隙にめっき液が染み入ったりと、ユーザ ー様の工程でトラブルの原因となります。
 そこで続く薬液処理(ここで黒化)で、酸化被膜を還元、再び金属銅に戻します。これで凹凸は滑らかになりますが、プリプレグとの密着性も少しスポイルされます。
 また金属化し、かつ表面積が増えた銅箔面が、吸湿したり、空気に触れて酸化したりすると、プリプレグとの密着性が低下しますので、速やかに二度目のプレス工程へと移る必要があります。



ブラウン処理
 粗化処理後の銅箔面が褐色(表題横に写真)になるので、この名前で呼ばれます。
 専用の薬液により銅箔面の厚み方向にソフトエッチングを施すことで無数の凹凸を形成します。電子顕微鏡で見ると、粗化面はハローレス処理よりも荒く見え、プリプレグとの密着性は良さそうです。そこで社内試験を行ったところ、プリプレグとの密着性は、ハローレス処理より若干高くなるという結果を得ました。
 さらに銅箔の表面には有機被膜、すなわち合成樹脂の薄膜が生成されます。この膜は銅箔面の酸化や吸湿を防ぎ、プリプレグと銅箔を接着する際の橋渡しとしても機能します。

多彩なラインナップ
 利昌工業では、FR-4.0と呼ばれる汎用タイプに加え、ガラス転移温度(Tg)が200℃である高耐熱タイプ。絶縁層の厚さ方向への熱膨張を抑えることで多層回路の縦方向の電気的接続信頼性に優れたタイプ。5G通信機器などで回路に高周波信号が流れても信号の減衰が少ない低伝送損失タイプ。EU諸国向けに臭素系難燃剤を含まないハロゲンフリータイプ。さらにはこれらの特性をあわせもつタイプ。といった多彩な特長をもつ多層プリント配線板材料を取り揃えております。

ご下命にあたって
 このたび新規ラインを導入。さらには銅箔引き剥がし強度にも優れることに鑑み、利昌工業では、新たな内層回路データを伴うご注文の際は、ブラウン処理のご採用を検討いただきたく、ご提案申し上げます。
 また、すでに内層回路のデータをお預かりしているリピート品をご下命の際は、ハローレス処理、あるいはブラウン処理、いずれかのご選択は、図番ごとにご指定いただくことが可能ですので、こちらもご検討いただきたく、あわせてご案内申しあげます。
 なお、UL登録(ファイル番号/E46819)においては内層回路の粗化を、どちらの方法で行ったものでも品番に変更はなく、従来通りの取り扱いが可能です。