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2025年01月10日
 

利昌工業株式会社

表面硬度に優れた内装建材をご提案
 去る10月24〜25日「ふじさんめっせ」(富士市産業交流展示場)にて「ふじのくにセルロース循環経済国際展示会」が開催されました。
 利昌工業はここに、大建工業株式会社様と合同で小間を出展。セルロースナノファイバーで補強することで、一般的なものより3倍以上も表面硬度に優れる内装建材(半屋外仕様の床材)を展示し、ご来訪の皆様にご提案しました。

「ダイライト」と「CNF成形板」のコラボレーション
 この建材は、大建工業株式会社様の無機繊維板「ダイライト」の表面に、樹脂を含浸したCNF成形板(0.5mm厚)を配し、さらにその表面に、さまざまな意匠の化粧シートを張ったものです。
 このコラボレーションはNEDO、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology Development Organization)の助成を得ることで成就しました。

セルロースとは
 セルロースは樹木など植物の体幹を成すもので、水と空気中の二酸化炭素から光合成によって得られるブドウ糖が数多くつながった自然由来の高分子です。この過程で排出されるのは酸素。樹木の重さの約半分はセルロースなどを構成する炭素であるとされており、この炭素は循環しているため地球温暖化とは無縁です。

持続可能な開発目標 達成のために
 大木が自らを支えているのは、体幹となるセルロースの強さに由来します。我々の最も身近にあるセルロースの加工品は紙です。源氏物語の写本が今に残るように、長期の耐久性も実証済みです。
 近年では、このような植物由来のセルロースの活用の場を広げることで、石油由来の材料への依存度を減らすことが期待されています。

セルロースナノファイバー(CNF)とは
 セルロースを進化させる手段のひとつに「ナノサイズ化」があります。下の写真はノートを電子顕微鏡で1000倍に拡大したもので、繊維状に見えるのが木材チップから得たセルロース(パルプ)です。これら繊維の太さは一般的には100分の5ミリメートル(50μm)内外です。

 CNFは、これらをさらに細かくサブミクロンからナノサイズに解繊したもので、50μmの繊維をさらに百から千本に裂くようなイメージです。
 紙のように、セルロースが複雑に絡み合ってできたものは、セルロースの繊維が細いほど丈夫になります。細くなれば繊維どうしが交わる箇所が多くなり、さらに複雑に絡み合うからです。
 かなり強引な例えで恐縮ですが、ナタデココと寒天は、どちらも似たような見た目ですが、ナタデココが寒天よりもコリコリと硬いのは、食物繊維(ナノセルロース)が複雑に絡み合っているためです。

ラインナップの充実
 利昌工業では約1世紀にわたり、紙や布あるいは木材といったセルロースを含む材料で強化した熱硬化性のプラスチック板(リショーライト)を製造販売しており、セルロース系材料の取り扱いは得意とするところです。

 2 0 1 9 年の東京モーターショーでは、CNF-100%のハニカムサンドイッチパネルのボンネットアウターを試作し、環境省のNCV(Nano Cellulose Vehicle Project)のコンセプトカーの軽量化に貢献しました。
 その後も現在に至るまで用途に応じたCNFの材料開発を進めることでCNF製品のラインナップが充実してまいりました。

樹脂成形板でダイライトを補強
 NEDOの助成事業ではCNFを内装建材に適用するため、吸湿によるCNF成形板の寸法変化を抑えるべくCNFの間隙の隅々に樹脂を含浸した成形板(シート)を新たに開発しました。
 CNFで樹脂を補強するタイプの材料は、多く開発検討されていますが、CNFの含有率は多くても10%程度です。一方ダイライトを補強する樹脂含浸CNFシートはCNFの含有率が70%以上あります。このようにCNFの間隙の隅々にまで満遍なく樹脂を染み込ませるのは大変ですが、1 0 0 年培ったノウハウや知見で達成できました。

 これを大建工業株式会社様がダイライトに張り合わせることで、CNFを使っていない床材より3倍以上も表面硬度が向上した内層建材(上記グラフのPF-CNF)の共同開発に至りました。

まとめ
 CNFの社会実装の障害は価格の高さです。本開発検討のようなCNFを多く含む材料が建材として施工されると、CNFの需要が大量に創出され、CNFの価格低下を推進できます。
 CNFを使った床材は表面の耐久性に優れますので当初より想定している住宅やオフィスへの適用はもとより、スケートボードや車いすバスケットの室内床面、あるいは表面の耐久性と硬度が必要な作業台といった用途にも好適ではないかと考えています。
 ご興味をお持ちいただければ、部分的に試験施工して、効果を検証いただくのも良いかと存じまので、ご評価の機会を賜れると幸甚に存じます。