■はじめに
国内の高圧配電系統は架空線によるものが多く、大地との距離が十分とれるため、中性点は非接地方式です。このため、地絡事故が起こっても地絡電流が小さく、これを検出しにくい傾向にあります。それでも1線地絡が生じた場合は健全相にも異常電圧が生じ、主回路機器の絶縁に影響を及ぼす恐れがあります。
このため、比較的小さい地絡エネルギーを検出して保護装置を動作させることができれば、主回路機器への絶縁破壊などの影響を抑えられるため、小さな電流で継電器を動作させることができる「接地形計器用変圧器」(EVT=Earthed VoltageTransformer)を介して接地しています。
EVTによる接地は、系統の中性点接地というよりも、むしろ計測のための高インピーダンス接地であり「仮想中性点」と言えます。
いっぽう地中ケーブルによる高圧配電の場合は、ケーブルと大地との間に生じる「対地静電容量」を考慮する必要があります。ケーブルの亘長が長いと対地静電容量の充電電流は1アンペア以上になり、地絡検出感度に影響が生じます。
このような現象を抑制するため中性点の接地が行われます。中性点接地を行うには専用の「接地用変圧器」(GTR=Grounding Transformer)を設けるか、変圧器の中性点を接地する中性点接地方式があります。
本稿では、EVTおよびGTRの役割と中性点接地を目的としたGTRの選定に対する注意点についてご案内いたします。
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