RISHO

一隅の経営 79
RISHO NEWS176

利昌工業株式会社 代表取締役社長

利 倉 晄 一

 

法は法の味方

79-01

 法律は、正義の味方ではありません。たまたま正義の方に軸足を置いているという程度で、決して正義の味方でも、善意の味方でも、道義の味方でもありません。
 善意で気軽に個人保証をして、その結果… 『同情はします。お気の毒ですが法律的には致しかたがありません。』ということになります。
 世の中には、法の裏を潜るなどという悪い輩もいます。
 『法は法の味方』という冷静な判断が必要です。


競 争

79-02

 良いとか、悪いとかは別にして、私達は競争社会の中に生きているのでありますから、競争から逃げるわけにはまいりません。
 一昨年から当社は、研究所にも競争原理を導入しました。一つのテーマについて複数のチームが競いあう。早く良いものを開発したチームが採用され、後れたチームは脱落するというやり方です。
 競争原理に聖域はありません。会社自体がグローバル社会の中で激しい競争をしているわけですから、研究所だけは仲良しクラブで、出来た時が納期みたいな考え方では困るわけです。研究に限らずどの部門も競争から逃れるわけにはいきません。


査 定

79-03

 人間が人間を査定したり、裁いたりするということは、絶対誤りなくできるか?というと、神様ではないのですから、そうではない場合も出てくるかも知れません。冤罪というケースもあります。
 しかし、そういうことがあるから、しないでおこうということにならないのは、秩序を守るためには必要だからです。
 多少間違いが起こるケースがあっても、やらないより、やった方が良いというケースは多々あります。


企業の三つの貢献

79-04

@企業は利益を出して、税金を払うことで、国家に貢献します。
A企業は、可能な限り雇用をまもり、社会に貢献します。
B製造会社なら、技術開発に力をいれて、社会のニーズにあった商品を通じて、世の中の進歩と安全に貢献します。
 企業はこの三つの貢献を通じて『善なる存在』であり続けることができます。


グローバル化

79-05

 グローバル化は、ひとつの大きな流れであって、止めたり、後戻りしたりすることはできません。
 従って、大は大なりに、中は中なりに、小は小なりにグローバル化しなければ生き残れないと思います。
 世界が競争相手ですから、たとえニッチな市場でも、コスト競争力、品質とも日本のトップになることです。日本でトップになれば、世界のトップを目指し世界で売ることを考えるべきです。そして規模の大小にかかわらず、世界から『必要とされる』企業にならなくてはなりません。


犠牲者

79-06

 世の中が進歩する時には、成功者の影で、必ず犠牲者がでます。
 これは天の定めといいますか、全ての人を救うわけにはいかないのです。
 世の中には、100 歳まで長生きする人もおればたった10 歳で死んで行く子供もいます。もともと不公平で、私達はその現実に耐えていかなければなりません。犠牲者が出る、そういう事を経て、世の中は進歩して行きます。
 全てを助けようとなると、善政が、実は悪政になることがあります。


労使の関係

79-07

 労使の交渉というのは、どちらかが勝って、どちらかが負けるというものではありません。
 会社側が負けた時は、組合側も負け。組合が勝った時は、会社も勝ち…こういう関係であるべきだと思っています。
 片方が一方的に勝ったとしても、その後で必ずしこりが残ったり、士気が低下したり、長い目でみれば結局うまく行かず、勝った、勝ったと喜んではいられないのです。

 どちらもがWin Win の関係であるべきなのです。
私が昭和38 年(1963 年) に制定した当社の企業理念が『労使の運命は共同であるの意識…』で始まるのは、私の長年の経験から導きだされた結論です。


人と接するのが営業

79-08

 出てゆくのが営業の仕事ではありせん。人と接するのが営業の仕事なのです。
 お店にいて、客と応対する営業もありますし、営業部でなくとも、客と接している時は営業をしているわけです。
 自動車教習所の場合でも、生徒さんに実技を教えている指導員は、営業スタッフを兼ねています。
 自動車教習所は教育産業とはいえ、一方でお客様と接するサービス産業でもありますから、したがって習う生徒さんの気持になって親切丁寧な指導を心がけることは、お客様に喜んで頂くという営業の仕事に通じます。


マーケティング

79-09

 マーケティングとは、全体像をつかむということです。
 目の不自由な方が、象に触ったとき、鼻にふれた人は『象は蛇のようなもの』というかもしれません。
 あくなき探究心で、像の全体の姿をみつけなければなりません。単発的にものごとを聞いて、単発的に処理していては成果には結び付かないと思います。
 人から一を聞いたら、それをもっと横に広げ、堀り下げて自分から積極的に求めないと知識は増えません。
 営業の基礎はマーケティングにあります。どこにどれだけの需要がある…この全体像をつかむことが営業のスタートです。


生きている証拠

79-10

 困難は生きている限り、次から次へと起こってくるもので一つの困難が解決したら、また次の困難が必ず出てきます。
 しかし、困難が起こってくるということは、個人でいえば生きているとうことであって、企業で考えれば、企業が現在活動しているとうことです。企業が閉鎖されたり、つぶれてしまったりしたら、そういう困難はないわけです。
 今日、ご出席の皆様も、困難が次々起こってくるのは、生きている証であり、それが人生なんだと考えて、困難に真正面から、立ち回かう勇気を、どうか忘れないようにしていただきたい。
 私は満80歳になりましたが、一年に一回ですけれど、こうして皆さんの元気な顔を見ると私もまた頑張らないといかんという気になります。
 来年も元気な顔を見せて下さい。
(昨年10 月13 日に開催された、利昌工業を定年退職された方々が年に一度集まる『昌友会』で。昌友会の記事はこちらをご参照)


最初に考える

79-11

 ものごとを始める時は、最初にありとあらゆる事を考えておくことが大切です。
 失敗するのは、実は『最初』で失敗しているのです。だから後から、いくら頑張ってもそれは失敗の上塗りになりがちです。


戦争の怖さ

79-12

 戦争をしたことのない人は戦争の怖さを知りません。喧嘩をしたことのない人は喧嘩の怖さを知りません。
 戦争や喧嘩をした人は、戦争や喧嘩の怖さを知っています。
 従って、出きればしたくない。
 しかし『したくない』というのと『出来ない』というのとは異なります。
 イザとなったら『やります』。何故なら、やらないと後で、皆に、もっと大きな犠牲を強いることがあるからです。


企業間の競争

79-13

 企業どうしの競争は、ボクシングのようにランクがありません。無差別競争です。あまり大きくないところは、勝とうと思わないで、勝てなくとも負けない方法はないか?と考えることです。
 勝つ方法だけを考えるとスキができます。負けない方法、負けまいと考えると、負けない工夫という知恵がでてきます。



本稿は、利昌工業株式会社取締役社長 利倉晄一が社内の会議等で、発言したことを社員が記録したもので、社内報に掲載したものを一部転載させて頂きました。